11.26.2014

イロイロイロ|第2回


下東史明

第2回 イロイロ違いとモノ違い

車体のイロに注目した、まったくあたらしい発想の鉄道本『トレインイロ』が、今回、電子書籍になりました。これを記念して、著者の下東史明さんに、イロとモノの見方についてのエッセイを寄稿いただます。このイメージはいったい何…? 第2回です。お楽しみください!(編集部)

『トレインイロ』
書籍版:
朝日出版社ウェブサイトAmazonhontoジュンク堂書店紀伊国屋書店楽天ブックス
電子書籍版:
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(全部で8種類。サイズはすべて1024×768ピクセル)

前回は三つの事例とともに、モノ一般を「正面以外から」「複数並べて」見ることの面白さについてご覧に入れました。
今回は図形のレイアウトを同じにしたまま色を変えるだけで、イメージが浮かぶ形象も変わる事例についてご紹介します。

正確な比率ではありませんがAは日の丸を抽象化したものです。


A


円の色を金色に、周囲を赤色に変換するとBになります。


B


これは一体、何でしょう。



日の丸と全く違うカラーリングであるにもかかわらず、「日本」のイメージが浮かびます。
恐らく、四角形の真ん中に正円が配置されているからでしょう。


歴史(特にミリタリー)好きの方だと頭の中で像を結ぶ形象があるかもしれません。B’の天皇旗です。



B'


天皇旗は軍旗の一種で、例えば旧海軍だと天皇乗艦時の艦船に掲げられていました。
現在でもBの「金と赤の組み合わせ」は公式に採用されていて、日本の10年用パスポートがそれです。

次にCをご覧ください。


C


Bの赤い部分だけを紺色に変えています。
僕には夜空に浮かぶ満月が連想されます。日本のイメージは全く連想されなくなったから不思議です。


A B C


「四角形とその中心にある正円」と日本のイメージは必ずしもリンクしないのではないだろうか、と思わせるものは他にもあります。例えばDはパラオの国旗です。


D


次もレイアウトデザインは同一ながら、カラーリングの組み合わせが異なる事例をご覧に入れます。
Eです。


E


また日の丸かな?と思われた方もいらっしゃるでしょうが、他にもありませんか?
僕は日の丸弁当つまり白米と梅干しの組み合わせをEに見ました。

では、色を置き換えます。Fです。


F


ほくろと見るのも正解でしょうし、第一回の「上から見る」視点を活かせば鉛筆(真上から)にも見えます。

さらにFの円部分のみ色をピンクに変えます。
Gです。


G


間違いなく、人間の胸部がイメージできるはず。FとGを比べると、Gを知ったせいかFの肌色が人間の肌にしか見えません。僕たちは直近の形象が持つ色から受ける連想に引っ張られるクセがあるのかもしれません。


E F G


円形以外も見ていきましょう。

阪神タイガースファンの僕には、Hはタイガースしかイメージが浮かばない形象です。


H


ただ、Hの黄色部分だけを白に変えるとイメージは一変します。
Iです。


I


Tシャツの柄としても見かけますが、これは囚人服によく使われるカラーリング。お葬式で目にする幕(鯨幕)を横に倒してもIになります。

次はIの黒い帯だけ、オレンジに変えてみます。
Jです。


J


ある一つのイメージから僕はJを作りましたが、多くの方にとって特定の形象はもちろん、ぼんやりしたイメージを連想するのさえ難しいかと思います。

ただ、Jを「これだ!」と自信を持って呼べる方はほくそ笑むのではないでしょうか。
正解へすぐに参らず、少しの時間、Jを見つめていただけると嬉しいです。



いかがでしょうか。
Jはチキンラーメンです。

僕の周りの人たちにもJをトライしてもらいましたが、正解を告げると「そうだ!」と言う人が多かった。頭のどこかに必ずイメージは存在しているのに、なかなか像が結ばない好例と思います。

今回最後のイロへ参ります。
まずK。


K



プリンに見えます。

Kの茶色い部分を白に変えるとLになります。


L



なんとも爽やかなカラーリングで、僕は最初、Lに菊の花を見ました。もう少し頭をひねってみると、、、
一つありました。ビールです。白い部分が泡に見えませんか?

Lの白い部分はそのままに、黄色を青色に変えてみましょう。Mです。


M


飲み物関連でイメージを広げるとサントリー「南アルプスの天然水」にも見えるほか、多くの方は富士山を連想されたでしょう。写真で見る富士山はもう少し濃い青かもしれませんが、イラストやグッズに描かれる場合はMのカラーリングが多いように思います。富士山を日本の代名詞と捉え連想を広げると、サッカー日本代表のサムライブルーが思い浮かびます。サッカー日本代表のユニフォームは青と白の上下(半ズボンが白・時期により異なる)で、Mとよく似ています。


K L M


今回はイロイロなモノのイロ違いをあえて作り出し、モノ一般を見直しました。
次回も続けて参ります。お楽しみに。



第1回へ

(つづく)


[著者紹介]


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