山本貴光
第2回 読書について(1)
連載第二回。テーマやジャンルの良書をどんどん紹介する、という展開と思いきや、筆者は、そうしたブックガイドの通例に反して、読書が(そもそも)良きものと推奨された時代の最良の証言を召喚することにしたようです。読書に就く前に知っておいていいかもしれない「読書術」のガイド。
コンピュータやネットワーク、ケータイやiPad、Kindleといった各種ディジタル機器の普及によって、書物や文章を読む環境が、かつてなく広がり、多様になっています。そうした状況のなか、従来使われてきた紙の書物の位置もまた、かつてなく揺らいでいるようです。電子書籍が何度目かの登場を果たし、「電子か紙か」といった議論を目にする機会も増えています。
ところでこの連載は、ブックガイド、つまり書物の案内を目的とするものです。ですから周囲の変化に惑わず、従来の紙の書物の話を淡々と進めるのも悪くないと思いました。しかし、せっかくの機会でもあります。この際、「読書」とはどういう営みなのか、「書物」とはなんなのか、ということについて、いま一度、とっくり考えてみることから出発してもよいのではないかと思い直した次第です。いわば足下から見直してみようというわけです。