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中川恵一
イラスト 寄藤文平
イラスト 寄藤文平
第1回
東日本大震災の被災者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。今回の原発事故により、「放射線」という言葉を聞かない日はありません。ただ怖がる、のではなく、「正しく怖がる」ために必要なことを皆さまと共に考えていきたいと思います。
1. 放射線を語るための「言葉」からはじめましょう。
テレビから突然、「シーベルト」とか「マイクロ」とか「ベクレル」とか、耳慣れない言葉が聞こえてくるようになりました。よくわからないからこそ、「怖そう」とか、「どうなってしまうんだろう」といった不安や恐怖を抱いている方も多いのではないでしょうか。
たしかに放射線は目に見えず、扱いを誤れば危険なものです。健康に被害を及ぼしますし、場合によっては人の命を奪う。
さて、一般に、相手がどんなものか、どこがどう危険なのかわからなければ、対処できません。
そして、放射線を知り、対処するためには、要は「正しく警戒する」「正しく怖がる」ためには、まず放射線独特の「言葉」をきちんと理解したいものです。ごく少数の用語と単位、数字だけで十分です。
これは、インターネットの話をするのに、「メガ」とか「バイト」の意味を知らないとわけが分からなくなってしまうのと同じです。
「1ギガバイトのPDFをZIPで圧縮してインターネットプロトコル・アドレス変更後に……」と言われても、普通は何がなんだか分かりません。分からないから、手に負えないと思ってしまう。
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しかし、言葉の一つひとつを基本から理解し、「化けの皮」をはがせばよいのです。
まずは、「言葉」から始めましょう。
2. 「被ばく(被曝)」は「被爆」ではありません。
「ゲンシリョク」「ホウシャノウ」「ヒバク」と聞くと、原子爆弾による「被爆(ひばく)」を想像する人も多いと思います。
でも、放射線の場合、「被ばく」は「被曝」と書きます。これは放射線に「さらされる」という意味です。「ばく」の漢字が、「火」偏じゃなくて「日」偏の「曝」です。訓読みは「さらす」ですね。むずかしい文字なので、以下、「被曝」ではなく、「被ばく」と表記します。
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他方、原子爆弾の「被爆」の方は、日常的ではありません。もともとは、「爆撃を受ける(被る)」という意味です。日本では主に、原子爆弾によって、直接的・間接的に被害を受けることを指します。
原子爆弾の「被爆」の方は、戦時における核兵器による爆撃ですから、突発的な事態で防ぎようもありませんが、放射線の「被曝(被ばく)」は違います。正しい知識を持てばリスクも減らせますし、予防もできるのです。
[著者紹介]
著者による朝日出版社の本
死を忘れた日本人
がんのひみつ