7.09.2018

更新情報

★2018年7月9日 全卓樹さん「南国科学通信」第7回 付和雷同の社会学を更新しました!
第6回 確率と自由 | 第5回 流星群の夜に | 第4回 アリと自由 | 第3回 アリたちの晴朗な世界 | 第2回 世界の中心にすまう闇 | 「南国科学通信」第1回


★2018年6月16日 人類の夜明けをめぐる本棚会議 本棚会議vol.2『先史学者プラトン』刊行記念 前編 後編 
本棚案内 山本貴光+吉川浩満 井手ゆみこ(ジュンク堂書店人文書担当)

2018年3月16日 末井昭さん「自殺会議(仮)」 
自殺した息子に対して加害者であるという意識を持ち続ける映画監督 原一男インタビュー

を更新しました!

2017年11月22日 仲谷正史+傳田光洋+阿部公彦「触感 × 皮膚 × 文学 「触れること」をめぐる冒険」を公開しました! 

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南国科学通信|第7回 付和雷同の社会学

全卓樹
第7回 付和雷同の社会学

フランス語に「パニュルジュの羊みたいに」という表現があって、付和雷同ふわらいどうする様をさす言葉である。智慧者のいたずら屋パニュルジュの物語に由来するのだという。彼を笑い者にした商人から、リーダーと思しき羊を一匹買い取ったパニュルジュが、すぐさま羊を海に投げ込むや、残りの羊も皆海に飛び込んで、商人は大損をしたという故事である。

人間だれしもの心には、多かれ少なかれ付和雷同の習性が根深く巣食っている。パニュルジュならぬわれわれはむしろ、付和雷同心を逆手に取った賢い商人たちの宣伝にのって、日々細々ほそぼそと損をする消費者となったりする。

『ガルガンチュワとパンタグリュエル』第四の書より
パニュルジュの羊

物事を決めるときに他人の判断に頼る傾向と、それがもたらす社会的な帰結については、数理物理学的社会学の大家、ダンカン・ワッツ博士の有名な研究を見るのが良い。「人工的文化市場における不平等と予測不能性の実験的研究」と題された2006年の論文で、アメリカの「サイエンス」誌に掲載されている。

ワッツ博士のグループは、インターネット上に音楽ダウンロード・サイトを作った。サイトの訪問者は1万5千人近くに上り、彼らが被験者となったわけである。訪問者はみな、18組の新人アーティスト・グループの手になる48曲のリストを見せられる。曲はどれも試聴可能で、訪問者は曲に1から5の評価をつけたのちに、1曲ダウンロードできるという仕組みである。

訪問者たちは、彼ら自身気づかぬ間に、9つあるグループのどれかに振り分けられる。振り分けられた各訪問者の画面には、それぞれのグループ内での曲の評価の集計が、ポイントとして表示されるようになっている。つまり各訪問者は、それまでの他の訪問者の評価の集計を見ながら、自分の評価を下すわけである。ところが第1のグループだけ特殊で、ここでは他の訪問者の評価は表示されない。つまり第1グループでは訪問者は自分の耳と感性だけで曲を評価するわけである。そして残りの8つのグループは、同じ0評価から出発して、他人の意見を見ながらの評価が積もっていく、いわば8つの並行世界となる。

実験結果を一言で言うと「付和雷同の心が超人気曲をランダムに生み出す」である。