7.24.2012

加藤陽子

絵・題字 牧野伊三夫

母校・桜蔭学園での講演記録 後編2
『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』著者・加藤陽子さんが母校で話したこと、最終回。
総力戦となったときに動員される論理、「最悪の予想」の立てられ方。なぜ、人々が合理的な行動をとれなかったのか、なぜ、合理的な結末に至らないのか。紀元前のギリシアで初めて「戦史」が書かれた背景から、太平洋戦争まで。「歴史はすべて近代史だ」。(編集部)

歴史の「問い」の始まり

ヘロドトスは「歴史学の父」ですが、古代ギリシアにはもうひとり、歴史学にとって重要な人物がいます。トゥーキュディデース(紀元前460年頃~400年頃)で、ヘロドトスより20歳くらい若い。トゥーキュディデースという名前は、実に発音しにくい。ただ、岩波文庫などでは、この名前を採用しています。トゥーキュディデースは、まさに、今回のお話のテーマとしてドンピシャの題名、『戦史』という本を書きました。こちらは岩波文庫で、500ページ位もある厚さで上・中・下の三巻本の分量があります。やはり読み通すのは大変だと思いますが、こういう本を読んでいる女子高生には誰も話しかけてこないと思いますので、ひとりになりたいときなどにお薦めです(笑)


戦史 上 (岩波文庫 青 406-1) 戦史  (岩波文庫 青 406-1) 戦史 上 (岩波文庫 青 406-1)


トゥーキュディデースが誰と同じ世代かといえば、哲学者のソクラテスです。紀元前5~4世紀にかけてのギリシアは文化の隆盛期で、とくに都市国家のアテナイでは数々の演劇がうまれ、パルテノン神殿など、現代にも残る文化や芸術作品、建築物が生み出された時期でした。