2.12.2019

南国科学通信 第13回 思い出せない夢の倫理学

全卓樹
第13回 思い出せない夢の倫理学

人が夢からめたとき、思い出そうとする端から、夢は溶けるように去ってしまう。誰しも覚えがあるだろう。英国詩人サミュエル・テイラー・コールリッジは、夢の中で奇跡の長詩を授かったが、起床ののち全部は書き留めきれず、残された断章が神韻しんいん「クブラ・カーン」となった。

In Xanadu did Kubla Khan
A stately pleasure-dome decree :
Where Alph, the sacred river, ran
Through caverns measureless to man
Down to a sunless sea……

上都じょうとにて クブラ・カーンは 命じたり
豪奢ごうしゃなる 逸楽いつらくの宮 建つべしと
かの地には 聖なるアルフの 川流れ
人智には 数えおよばぬ ほこら抜け
日もなき海へ 落つると聞けり......

人は起床直後に、直近30秒ほどに見た夢を覚えているのがつねである、と京都大学の脳神経科学者、神谷之康かみたに・ゆきやす博士は語る。長大な夢も一瞬のような時間に圧縮されるのだろうか。