10.28.2013

末井昭
(刊行前のおまけ) 「自殺について」の講演と五人の自殺者 

『自殺』はもうすぐ書店に並びますが、本の刊行前に、末井さんに自殺講演会の依頼がやってきてしまいました。その講演会は11月26日に行われますが、どうせなら派手に(?)やろうと、自殺した人の霊を呼びだすことになったのだそうです。呼び出す予定の5名の霊の方々と末井さんのつながりなど……どうなることやら。(編集部)

朝日出版社第二編集部ブログ「自殺」が本にまとめられ、十一月一日に朝日出版社から発売されることになりました。

このブログを書き始めた発端は、四年ほど前に自殺防止について朝日新聞でインタビューされたことです。自殺未遂もしたことがない僕が、なぜ自殺についてインタビューの依頼をされたかというと、母親が近所の若い男とダイナマイト心中していて、そのことを書いたり喋ったりしていたからです。

その朝日新聞の記事を見た朝日出版社の鈴木久仁子さんから(ちなみに朝日新聞と朝日出版社は何も関係ありません)、自殺について「面白い」本を書いて欲しいという依頼がありました。最初は気乗りしなかったのですが、あの震災のあと自分も何かしないといけないという気持ちになり、ブログで連載というかたちで書くことになったのでした。

自殺について書くといっても、ことさら自殺に詳しいわけでもないし、自殺防止活動に参加しているわけでもありません。ただ、僕は自殺する人がわりと好きなので、社会から「脱落者」の烙印を押され、見向きもされない自殺者が可哀想、という気持ちで書いたものです。もちろん、自殺を勧めているわけではなく、自殺しないで欲しいという気持ちで書きました。

こういう本を出すと講演依頼がくるかもしれないと、半ば冗談で妻の美子ちゃんと話していました。美子ちゃんは「私がマネージャーになるよ。くっついて行って日本中旅行したいな~」とかノンキなことを言っておりました。

内心、そんなのくるわけがないと思っていたのですが、東京都西部教化センター・センター長の澁澤光紀上人から、本が出る前に講演依頼がきてしまいました(残念ながら東京でしたが)。東京都西部教化センターは日蓮宗のお坊さんたちの勉強会のようなものです。

僕一人だと不安なので、劇作家でもある富士本國寺住職・上杉清文上人、群馬本妙寺住職・鈴木祐弘上人に入ってもらい、八王子善龍寺住職・澁澤光紀上人司会による座談会も加えることにしました。

さらに、どうせなら自殺した人の霊も呼び出そうということになり、その方面での専門家でもある鈴木祐弘上人に話すと「誰でも呼びますよ~」とのことで、誰でも呼べるのなら僕に縁がある人で誰でも知っている人にしようということになり、末井富子、鈴木いづみ、太宰治、三島由紀夫、川端康成のみなさんに出てもらうことになったのでした。なんと、母親の末井富子以外は全員文学者です。

でも、ほかの方々はともかく、僕の母である末井富子のことはまったく知られてないわけですから、「どういう人だったか説明しましょうか?」と言うと、「いや、名前がわかれば大丈夫ですよ」と言われました。そんなに簡単なものなのか?

さて、母親以外の四名の方々と僕との縁ですが、鈴木いづみさんとは、著者と編集者という関係でお付き合いさせてもらっていました。「自殺」の原稿を書きながら、ときどきパンティストッキングで首吊り自殺したいづみさんを思い出し、いづみさんらしい死に方だったなぁとあらためて思ったりしていました。出てもらうなんて言うといづみさんは迷惑がるかもしれませんが、ノリのいい方だったので、あるいは喜んで出てくれるかもしれません。

あとの方々とはまったく面識はないのですが、太宰治さんが玉川上水で心中したのは昭和二十三年六月十三日で、その次の日に僕は生まれています。一日違いでおしいところですが、まぁ大目に見てもらうことにします。それに、僕は太宰さんの書かれた小説が大好きです。

三島由紀夫さんとの縁というと、三島さんが市ヶ谷の陸上自衛隊東部方面総監部の総監室で自決した日の朝、僕はストリーキングをしています。それが三島とどういう関係があるのかと言われそうですが、ストリーキングはそれまでの僕のモヤモヤが一気に爆発してやったようなもので、そのあと死んだようになっていましたから、自分では自決のようなものだったと思っています。 

ガス自殺の川端康成さんとのつながりはほとんどありませんが、ノーベル文学賞をもらっているので、ダイナマイトつながりということで出ていただくことにしました。

せっかく著名な方々に出てもらうわけですから、あれこれ質問などさせていただこうと思いましたが、「いたこじゃありませんから、質問はやめてください」とのことでした。残念。

どうなるかわかりませんが、この五人の霊に見守られながら、自殺の講演をやりたいと思っています。どうなることやら……。                     

日時  2013年11月26日(火)午後2時~5時30分
場所  福聚山 常円寺 祖師堂地下一階ホール
    新宿区西新宿7-12-5 電話03-3371-1797
祈祷  鈴木祐弘
講師  末井 昭
座談会 上杉清文・鈴木祐弘・末井 昭・澁澤光紀
参加費 1000円

どなたでも参加できますが、会場は60人ぐらいが限界と聞いていますので、ご予約をお願いします。

申し込み方法 「26日の『自殺について』受講希望」と書き、氏名・住所・ファックス・メールを明記の上、東京都西部教化センター(ファックス042-627-7227)にファックスでお申し込みください

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