12.26.2014

『理不尽な進化』「絶滅の視点から世界を眺める」ブックリスト



『理不尽な進化』刊行記念! 著者の吉川浩満さんに「絶滅の視点から世界を眺める」と題して、進化思想と人間存在をめぐる本を選んでいただきました! その数、42冊。『理不尽な進化』とあわせてお楽しみください。

★ブックフェアを開催してくださる書店さんを募集しております。吉川浩満さんがそれぞれの本へコメントを付した、配布できるB6サイズの小冊子をご用意します。ぜひご連絡ください。(編集部)

著者からのコメント
地球上に出現する生物種の99.9パーセント以上が絶滅してしまうことを知っているだろうか。しかもその多くは、能力が劣っているからというより、たんに運が悪いせいで滅んでしまうことも。おなじみの「適者生存」や「優勝劣敗」は、むしろ限られた状況でしか通用しないスローガンなのだ。生命の歴史は理不尽さに満ちている。そこで、普段あたりまえのように採用している「競争と生き残り」の観点ではなく、「絶滅と運」の観点から生命の歴史を眺めてみよう。すると、これまで見たこともなかったような眺望が開けてくるはずだ。

(1)絶滅と絶滅生物


40億年ともいわれる生命の歴史は、一握りの生き残り事例の歴史であるとともに、それを圧倒的に上回るスケールで演じられた絶滅事件の歴史だ。これまで生物が歩んできた破天荒な道のりの一端に触れてみよう。そうした紆余曲折の末に私たちヒトの存在もあるのだ。

ラウプ 『大絶滅──遺伝子が悪いのか運が悪いのか?』 平川出版社

丸岡照幸 『96%の大絶滅──地球史におきた環境大変動』 技術評論社

磯崎行雄監修 『絶滅の大研究』 PHP研究所

土屋健 『生物ミステリープロ1 エディアカラ紀、カンブリア紀の生物』 技術評論社

後藤和久 『決着! 恐竜絶滅論争』 岩波科学ライブラリー

NHK「恐竜」プロジェクト 『恐竜絶滅 ほ乳類の戦い』 ダイヤモンド社

リチャード・フォーティ 『生命40億年全史』 上・下、草思社文庫

カスパー・ヘンダーソン 『ほとんど想像すらされない奇妙な生き物たちの記録』 エクスナレッジ

クライブ・フィンレイソン 『そして最後にヒトが残った──ネアンデルタール人と私たちの50万年史』 白揚社

(2)ドーキンスvs.グールド


リチャード・ドーキンスとスティーヴン・ジェイ・グールド。読書界において人気を二分するスターは、四半世紀に渡って激しい論争を繰り広げた好敵手でもあった。両者の対立点を考えることで、進化論が私たちに呼び覚ます魅惑と混乱の源泉へと直行できるはずだ。

リチャード・ドーキンス 『盲目の時計職人──自然淘汰は偶然か?』 早川書房

リチャード・ドーキンス 『利己的な遺伝子 増補改訂版』 紀伊國屋書店

リチャード・ドーキンス 『好奇心の赴くままに ドーキンス自伝I: 私が科学者になるまで』 早川書房

スティーヴン・ジェイ・グールド 『ワンダフル・ライフ──バージェス頁岩と生物進化の物語』 ハヤカワ文庫

スティーヴン・ジェイ・グールド 『ダーウィン以来──進化論への招待』 ハヤカワ文庫

スティーヴン・ジェイ・グールド 『ぼくは上陸している──進化をめぐる旅の始まりの終わり』 上・下、早川書店

ダニエル・C・デネット 『ダーウィンの危険な思想──生命の意味と進化』 青土社

キム・ステレルニー 『ドーキンスvs.グールド──適応へのサバイバルゲーム』 ちくま学芸文庫

ウリカ・セーゲルストローレ 『社会生物学論争史──誰もが真理を擁護していた』 上・下、みすず書房

(3)進化論の世界


そもそも進化論ってなんなの? なにがそんなにおもしろいの? わかったつもりになっている人も、実際にダーウィンを読んだ人はどれだけいるだろうか。この機会に、ダーウィン本人や信頼できる専門家の著作をひもといてみよう。きっと新しい発見があるはずだ。

三中信宏 『進化思考の世界──ヒトは森羅万象をどう体系化するか』 NHKブックス

エリオット・ソーバー 『進化論の射程──生物学の哲学入門』 春秋社

チャールズ・ダーウィン 『種の起源』 上・下、光文社古典新訳文庫

松永俊男 『チャールズ・ダーウィンの生涯──進化論を生んだジェントルマンの社会』 朝日選書

新妻昭夫 『たくさんのふしぎ傑作集 ダーウィンのミミズの研究』 福音館

(4)進化論と近代的世界観


ダーウィン進化論の登場が私たち近代人の思想形成に大きな影響を与えたことはよく知られている。でも、具体的にどんな影響を与えたのか? そして、なぜ宗教的保守勢力は進化論を恐れるのか? それを正確に理解し説明できるだろうか。ドラマティックな思想の戦場に参戦しよう。

スティーヴン・ジェイ・グールド 『神と科学は共存できるか?』 日経BP社

リチャード・ドーキンス 『神は妄想である──宗教との決別』 早川書房

ライプニッツ 『モナドロジー・形而上学叙説』 中公クラシックス

マシュー・スチュアート 『宮廷人と異端者──ライプニッツとスピノザ、そして近代における神』 書肆心水

(5)進化論と人文的思考


進化論は、いわゆる自然科学の範疇を超えて、人文・社会科学の営みにも届く広い射程をもっている。それだけではない。進化論を学ぶことは、人間とその歴史、すなわち私たち自身について考えることにもつながるのだ。進化論の知が人文的な思考と呼応し、また相克しあう様を目撃しよう。

ハンス=ゲオルク・ガダマー 『真理と方法──哲学的解釈学の要綱』 1-3、法政大学出版局

渡邊二郎 『構造と解釈』 ちくま学芸文庫

渡辺一夫 『狂気について 他二十二篇』 岩波文庫

ヴァルター・ベンヤミン 『ベンヤミン・アンソロジー』 河出文庫

今村仁司 『ベンヤミン「歴史哲学テーゼ」精読』 岩波現代文庫

良知力 『向う岸からの世界史──一つの四八年革命史論』 ちくま学芸文庫

ヴィンフリート・メニングハウス 『美の約束』 現代思潮新社

真木悠介 『自我の起原──愛とエゴイズムの動物社会学』 岩波現代文庫

大澤真幸 『動物的/人間的 1. 社会の起原』 弘文堂

(6)文学における理不尽な進化


進化という現象は、人間の想像力を刺激してやまない。文学においてもさまざまなかたちで生物の進化、そしてヒトの進化がとりあげられてきた。18世紀の古典から最新のSFまで、『理不尽な進化』の執筆にインスピレーションを与えてくれた名作たちを精選した。

ヴォルテール 『カンディード 他五篇』 岩波文庫

ミシェル・ウエルベック 『素粒子』 ちくま文庫

山岸真編 『ポストヒューマンSF傑作選 スティーヴ・フィーヴァー』 ハヤカワ文庫

オルダス・ハクスリー 『すばらしい新世界』 光文社古典新訳文庫

ベン・H・ウィンタース 『地上最後の刑事』 早川書房

ベン・H・ウィンタース 『カウントダウン・シティ』 早川書房

カート・ヴォネガット 『ガラパゴスの箱舟』 ハヤカワ文庫

レイ・ブラッドベリ 『太陽の黄金の林檎』 ハヤカワ文庫

<了>

★ブックフェアを開催してくださる書店さんを募集しております。吉川浩満さんがそれぞれの本へコメントを付した、配布できるB6サイズの小冊子をご用意します。ぜひご連絡ください。(編集部)



吉川浩満『理不尽な進化――遺伝子と運のあいだ』
[朝日出版社ウェブサイト]
☆書店店頭、ほか、各オンライン書店でもご購入いただけます。
Amazon.co.jpジュンク堂 BOOK WEBセブンアンドワイ楽天ブックス紀伊國屋書店BookWeb本やタウン
《理系も文系も必読、歴史と人間を問い直す知的エンターテインメント》
99.9%の生物種が消える? この世は公平な場所ではない?
「絶滅」の視点から生命の歴史を眺めるとどうなるか。
進化論が私たちに呼び覚ます「魅惑と混乱」の源泉を、科学と人文知の接点で掘り当てる、近代思想の冒険的考古学!


「生き残りをかけた生存競争」「ダメなものは淘汰される」――でも、進化についての私たちの常識的なイメージが、生物進化の実相とかけ離れているとしたらどうでしょうか。
実は進化論という名のもとに、私たちがまったく別のものを信じ込んでいるのだとしたら? 書評子絶賛、科学の時代における哲学・思想のありかたに関心をもつすべての人、必読の書です!

【各紙誌絶賛! 】
養老孟司氏(毎日新聞)「進化論の面白さはどこにあるか、なぜそれが専門家の間でも極端な論争を呼ぶのか、本書はそこをみごとに説明する。[…]近年ここまでよくできた思想史を読んだ覚えがない」

山形浩生氏(新・山形月報! )「おー。進化論におけるグールドの敗北を明記した上で、その敗北を救うだけでなく、それをぼくたちみんなが抱える問題の鏡として使い、進化論やあらゆる学問の基盤にまで迫ろうという力業」

加藤典洋氏(共同通信)「一見難解な文系と理系の間の境界領域をやすやすと遊弋し、エンタメまじりに楽しむ知的な書き手が現れたこと。[…]広義の「進化」イデオロギーから自由な、成熟した感性がここにあること」

[著者紹介]

小社刊行の著者の本
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心脳問題―「脳の世紀」を生き抜く

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MiND マインド (ジョン・R・サール著)