5.11.2011

中川恵一
イラスト 寄藤文平
第3回
5. 「シーベルト」は放射線が人間の体に与える影響を示す単位。

放射線の量と強さを測るには、何を測るかによって、さまざまな単位が用いられます。その代表は「シーベルト(Sv)」です。

これは放射線をあびた(被ばくした)ときに、人間が受ける影響の強さを示しています。あびた放射線が強ければ強いほど、人間が受ける影響も強くなる。つまり、シーベルトの値も大きくなります。シーベルトという単位によって、いろいろな種類の放射線の影響を同じ尺度で比べることができるわけです。

たとえば、宇宙線・大気・地面・鉱物・食物など、自然界から受ける1年間の放射線の量は、世界平均で2,400マイクロシーベルト(2.4ミリシーベルト)。胸部レントゲン撮影を1回受けると、約50マイクロシーベルト(0.05ミリシーベルト)。ニューヨークー東京間を飛行機で移動すると、200マイクロシーベルト(0.2ミリシーベルト)の放射線を被ばくします。

人体への影響を考える場合、「100ミリシーベルト(mSv)」が一つの目安になります。広島・長崎の原爆などのデータからは、これより低いレベルでは、影響が現れたという証拠がないのです。ただし、「この量より少なければ安全、多ければ危険」ということではありません。たとえ100ミリシーベルトより多くてもメリットが大きければ受け入れてよい場合もありますし(たとえば放射線治療がこの場合に相当します)、100ミリシーベルトより少なくてもメリットが少なければ控える、というのが原則です。

放射線を測る単位には、他にベクレル(Bq)、グレイ(Gy)などがあります。


6. 「ミリ」「マイクロ」は「千分の1」「百万分の1」を表します。

放射線の人体への影響(危険度)を示すのがシーベルト(Sv)という単位でした。1シーベルトというのは人体にはっきり有害な影響を及ぼす値です(4シーベルトを全身にあびると半数の人間が死亡します)。私たちに関係してくるのは、これよりもっと軽微な、1シーベルトの千分の1、百万分の1といったレベルなのですが、「0.000…」のように小数点以下に「0」がたくさん並んでしまうのは不便です。そこで、ミリ(m)やマイクロ(μ)といった接頭辞を単位(Sv)の前に置いて使います。

ミリシーベルト(mSv)と言えば千分の1シーベルト、マイクロシーベルト(μSv)と言えば百万分の1シーベルトです。

ふだんの生活で1ミリと言えば、1ミリメートル(mm)、つまり1メートルの千分の1。ここから連想できます。1ミリシーベルト(mSv)は千分の1シーベルト(Sv)です。

さらに、マイクロは百万分の1、つまり、千分の1のさらに千分の1を表す言葉です。つまり、1シーベルト=千ミリシーベルト=百万マイクロシーベルト(1Sv=1,000mSv=1,000,000μSv)。

これらの数字をイメージするために、頭の中に1メートルのモノサシを思い浮かべてみてください。

1ミリメートルは1メートルの千分の1。とても短い。1マイクロメートルは、それをさらに千分の1にしたもの。もう見えないくらいの短さです。



つまり、1シーベルト(Sv)と1マイクロシーベルト(μSv)の放射線量では、雲泥うんでいの差(百万倍)があるのです(1万円札が100枚で100万円、この金額を1円玉で用意しようとすると、100万個必要になってたいへんです)。ちなみに「センチ」は百分の1を示す言葉です。

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